運命の人

「運命の人」を観ている。最初、あまり期待していなかった。TBSはもう終わったのか、と思えていたから。しかし、山崎豊子作品だし、TBSがどこまでやれるのか見てみたかった。

この作品は、山崎豊子の最新作だ。彼女の作品で一番衝撃的だったのが「真空地帯」だろう。そこまで描くか、と思えるくらい政治の内幕を暴露し、この国の真実を見る思いがしたのを覚えている。そして、同時に、これだけのことを描ける山崎豊子はすごいし、それを作りだしたのはまぎれもなき日本である。民主主義の国だなあと思った。
「運命の人」は沖縄返還交渉のさなかに起きた出来事である。西山太吉氏という毎日新聞の政治記者を中心に起きた外務省機密漏洩事件時の政府は政治的なスキャンダルを芸能スキャンダルに転換することで時間稼ぎをし、国家の品格を下げたことに至る。
対米従属という路線の継承を一段と強める引き金となった事件だ。
沖縄返還という祭りの裏側で裏交渉をしていたわけで、しかも、その事実をつい最近まで認めなかったのだから驚きだ。
アメリカの公文書で公開されているのに、日本側の関係者は事実無根だと言い、その時々の政府も存在を否認してきた。
しかし、ついに最近になって岡田前外相がこの事実を認め、政府が西山氏に謝罪したのだ。40年間闇に葬られてきたジャーナリストに光が差し込んだわけだが、そのきっかけとなったのがこの小説である。
時代を変える小説などあるわけもない。たかが絵空事の小説が多い中、山崎豊子の小説は、巨大な権力と対峙して一歩もひるまず、その問題にするどくメスを入れる。
膨大な資料をかき集め、年月をかけて事実関係を調べ上げる。そして、そこからドラマ仕立てにすることで劇的展開を起こす。
山崎豊子の中での主人公の多くは苦しみに満ちている。社会的使命を背負うことの苦渋と個人の幸せを願う気持ちとの葛藤に悩む。それは個人VS会社、家族VS国家との戦いでもある。
今回、山崎たっての希望で、主人公は本木指名だったようである。よく演じていると思う。本木の良いところは演技があまり臭くないところだろうか。そこに物足りなさもあるのだが、かなり演技も熟成されてきて、周りの役者連中の臭さの中で極めて清らかである。同じことは真木にも言える。この二人の抜擢は成功だろう。この二人の演技に好感が持てることで肉体問題にあまり興味が移らず、マスゴミの愚劣さのほうが目立つようになる。
もちろん、毎日新聞-TBS-山崎豊子という縁あってのことなのかもしれないが、ドラマの焦点-主題がぼけることを防いでいる。
今年のTVドラマ界では上半期一番の出来と言っていいだろう。
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by worsyu | 2012-02-16 12:00 | 芸能ネタ | Comments(0)
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