雨あがる-剣の達人

「雨あがる」という映画がある。黒澤明脚本である。死後、映画化された。よくできている。質が高い。丁寧に作っている。細かいところまで神経が行き届いている。映画のタッチが本当に黒澤が撮ったみたいで、ファンとしてはうれしくなってしまうだろう。
主人公は、剣術に優れてはいるが仕官できないまま旅から旅に流れている浪人。物腰柔らかで争いごとが嫌い。どちらかというとへぼ侍の様相。
寺尾聡(てらおあきら)が演じている。一緒に旅をしているのは、わが郷土に縁ある宮崎美子。賢妻を好演している。

あらすじを細かく言うつもりはないのだが・・・。その中のエピソードが面白かったので。寺尾が演じる伊兵衛の剣について考えさせられた。
彼は江戸に出て、名だたる道場の門をくぐり、そこで、師範と手合わせをする。間合いを計りながら、打ち合う前にタイミングを見て、「参った」と自分から負けを認めてしまう。勝った方は、悪い気はしない。後でいくばくかの金を貰うというわけだ。
ある時、高名な道場で仲代達矢演じる辻月丹という剣豪と手合わせをすることになる。伊兵衛は、当然、勝つつもりなどない。いつものようにタイミングを待っていたら、逆に「参った」と辻先生の方から先に負けを言われてしまう。
その後、「あなたには隙がなかった。勝ちたいとか、こうしてやろうとか考えていると、どこかに隙ができる。しかし、あなたにはそれがなかった。だから、私が負けることを認めたわけだ」と言われる。その後、伊兵衛は先生に付いて剣術を学び、免許皆伝を得る。

伊兵衛はその後、殿様に気に入られ、御前試合をすることとなる。彼は相手の太刀筋を見極め、かわし続け、隙を見て間合いを詰め急所を寸止めする。
痛快である。

長々と引用してきた。実際は、なかなか、こうはいかないものだが、以前のトリニータはこれに近い戦いぶりだったことを思い出したのだ。横浜マリノスにも近いものを感じる。

勝ちたい。点を入れたい。押し込みたい。そういう気持ちはもちろん大事だが、勝負に勝つということは、局面局面の勝負だけではない。流れがある。凌ぐ場面は凌ぐ。相手の隙を見つけて電光石火の速さで決める。

勝ちたいだとか、負けるのが怖いとか、人間のそういう気持ちを強く持つことは、心が乱れてしまうことになる。冷静な判断が出来なくなる。

サッカーとは、意外に剣術に似ている。
つまり、相手に隙ができ、そこをうまく付けたら点が入る。隙が出来なければ失点しない。隙を作らず、猛攻撃をかわす術を身につけたら、簡単に負けないだろう。
そして、勝つためには、点を入れるためには、相手を崩し、隙を見つけ、そこを効果的に高い確率でしとめる方法を見つける。

もう、J1の速さはわかっただろう。ここから、闇雲にがむしゃらに攻撃的に行ったら全く勝てないだろう。
まず、守備。隙をなくす。穴をふさぐ。もちろん、心の隙もなくす。

勝つか負けるかは、その時の相手とのバランスだ。無欲でやれば必ず好転する。
最終盤に向けて力をコントロールし、勝負に徹せよ。


「雨あがる」はとてもよくできた日本映画である。惜しむらくはラスト。やっぱり、殿様が来て、歓談するシーンをロングでいいから欲しかったかな・・・
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by worsyu | 2013-04-30 12:20 | サッカー | Comments(0)
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